機器分析分野の研究テーマ

研究概要  
 ラジカルC−C結合形成反応は種々の有機化合物を合成するうえで非常に有用な反応である。しかし,ラジカルという化学種は非常に反応性が高く,通常のイ オン的な反応では困難な箇所に新しく化学結合を形成できるといった利点がある反面,その反応性の高さ故に反応の制御が難しいといった問題が依然として残さ れている。また,現在最も広く用いられているラジカル反応剤が,毒性が強く反応後の除去が困難な有機スズ化合物であるということも大きな問題である。我々 は,ラジカルC−C結合形成反応におけるこれら2つの問題点の解決を目指して,一電子酸化によるラジカル発生法に着目し、これを用いた新規ラジカルC−C 結合形成反応の開発研究を行っている。

 

一 電子酸化剤を用いた新規ラジカルC−C結合形成反応の開発

 
ラジカルC−C結合形成反応に用いられる一電子酸化剤として,Mn(OAc)3や CAN(硝酸二アンモニウムセリウム)などが知られているが,中でもMn(OAc)3を用いた反応 に関してはこれまでに系統的な研究が行われ,天然物合成等への応用も数多く報告されている。一方,CANに関しては,Mn(OAc)3に 比べて反応性が高いが無水条件を必要とせず,取り扱いが容易であるうえ,比較的毒性が低く安価であるなど優れた特徴を有している反面,水やメタノール,ア セトニトリルなどの極性溶媒には可溶であるが,有機合成によく用いられる非極性溶媒にはほとんど溶解しないといった使い勝手の悪さから,これまでその利用 には大きな制限があった。そのため,CANを用いたラジカルC−C結合形成反応はいまだ実用的とは言えず,その応用もほとんど報告されていない。そこで我 々は,これらの問題を解決すべく,CANの構造に着目し,水と非極性溶媒から成る2相系にて4級アンモニウム塩を相間移動触媒として用いれば,水中に溶解 しているCe(IV)を非極性溶媒中に取り込むことができ,目的とする反応を有機相中にて行うことが出来るものと考えた。また,用いる4級アンモニウム塩 を光学活性なものとすれば反応の不斉化ができ,反応により生じたCe(III)を水中にて別の酸化剤でCe(IV)へと再酸化すれば,用いるCANの量を 触媒量へと減らすことが出来るものと考えた。現在,このようなコンセプトに基づき,研究を行なっているところである。