疾患解析プローブ・ケミカル分野Division of Probe Chemistry for Disease Analysis
スタッフ
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准教授
北村 陽二
Kitamura Yoji -
助教
小阪 孝史
Kozaka Takashi
目的と研究課題
疾患解析プローブ・ケミカル分野では、高次機能疾患のメカニズムに基づいた神経機能変化を可視化する放射性プローブを開発することにより、早期診断法や早期治療による治療効果判定法の確立を目指した研究を行っています。また、がんの種類・特徴に基づいた鑑別診断可能な放射性プローブの開発研究も進めています。また、プローブの開発の基盤となる有機合成化学について、実用的で環境に優しい酸化的反応の開発研究、銅や亜鉛などの金属触媒の特性を活かした新規合成手法の開発研究を行っています。
ストレス性疾患の客観的な診断を目指した脳神経機能変化の可視化研究
シグマ(σ)受容体は記憶・学習だけでなくストレスにも深く関係しており、抗不安作用、ストレス緩解及び神経保護作用があるとされています。我々はアセチルコリントランスポーター(VAChT)プローブの開発研究の過程で、σ受容体に高い親和性を有する化合物を発見し、その化合物が従来のσ受容体リガンドより数十倍親和性が高いことを明らかにしました。現在、この新規化合物を基に、構造活性相関を調べることにより、官能基の種類や導入位置を工夫し、さらに特異的親和性の高い新規化合物を発見するための研究を行っています。これまでに、SPECT用の放射性ヨウ素標識 (+)-para-iodovesamicol [(+)-PIV]及びPET用の (+)-[11C]para-methyliodovesamicol [(+)-[11C]PMV]を開発し、インビボにおいても、σ受容体に対して選択的かつ高親和性に結合することを明らかにしてきました。今後、ストレスモデル動物を使って、σ受容体の変化を調べていく予定です。
触媒的酸素酸化を用いる環境調和型ニトリルオキシド発生法の開発研究
1,3-双極子の一種であるニトリルオキシドはその高い反応性のため、アルドキシムの酸化などによって用時調製されるのが一般的ですが、従来法では毒性や危険性の高い酸化剤の使用、多量の廃棄物の発生といった課題がありました。我々は末端酸化剤として酸素(空気)を用いる経済性・環境調和性に優れた酸化手法を開発すべく研究を行っています。現在、アルドキシムをアルキン共存下空気中で触媒量の亜硝酸アルキルエステルと反応させる新規手法を見出し、更なる改良を重ねているところです。
カスケード型反応を用いた中員環縮環型骨格の新規構築法の開発研究
一般的に合成が難しいとされている中員環化合物の効率的な新規合成法の開発を目的として、1種類の金属触媒が引き起こす三つの連続的な環化反応(カスケード型環化反応)について研究しています。現在までに、モデル基質であるヒドロキシエンジイン型化合物を亜鉛ルイス酸触媒とともにマイクロウェーブ加熱することで、一挙に中員環と5員環が縮環した骨格が構築できることを明らかにしました。触媒の効率化に向けてさらに検討を進めています。